神德王

神德王

 神德王が擁立された。
 姓は朴氏、諱は景暉である。
 阿達羅王の遠孫で、父は乂兼(一説には銳謙という)、定康大王に仕えて大阿飡となった。
 母は貞和夫人、妃は金氏、憲康大王の娘である。
 孝恭王が死去したが、子がおらず国民が推戴した為に即位した。

 元年、五月。
 追尊して考を宣聖大王とし、母を貞和太后とし、妃を義成王后とした。
 子の昇英を王太子に立て、拜して伊飡の繼康を上大等に任命した。

 二年、夏四月。
 霜が降った。
 地震が起こった。

 三年、春三月。
 霜が降った。
 弓裔が水德萬歲を政開元年に改めた。

 四年、夏六月。
 槧浦水と東海水が互いに擊ち合った。波の高さは二十丈あまり、三日にして止んだ。

 五年、秋八月。
 甄萱が大耶仇史二城を攻めたが勝てなかった。

 冬十月。
 地震が起こった。音は雷のようであった。

 六年、春正月。
 太白が月を犯した。

 秋七月。
 王が死去した。
 諡を神德といい、竹城に葬られた。

 

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≪白文≫
 神德王立。
 姓朴氏、諱景暉。
 阿達羅王遠孫、父乂兼、一云銳謙、事定康大王爲大阿飡。
 母、貞和夫人、妃、金氏、憲康大王之女。
 孝恭王薨、無子、爲國人推戴卽位。

 元年、五月。
 追尊考爲宣聖大王、母爲貞和太后、妃爲義成王后。
 立子昇英爲王太子、拜伊飡繼康爲上大等。

 二年、夏四月。
 隕霜。
 地震。
 三年、春三月。
 隕霜。
 弓裔改水德萬歲爲政開元年。

 四年、夏六月。
 槧浦水與東海水相擊、浪高二十丈許、三日而止。

 五年、秋八月。
 甄萱攻大耶仇史二城、不克。

 冬十月。
 地震、聲如雷。

 六年、春正月。
 太白犯月。

 秋七月。
 王薨。
 諡曰神德、葬于竹城。



≪書き下し文≫
 神德王立つ。
 姓は朴氏、諱は景暉なり。
 阿達羅王の遠孫、父は乂兼、一に銳謙と云ふ、定康大王に事へて大阿飡と爲る。
 母は貞和夫人、妃は金氏、憲康大王の女(むすめ)なり。
 孝恭王の薨ずるも、子無し、國人の推戴の爲に卽位す。

 元年、五月。
 追尊して考を宣聖大王と爲らしめ、母を貞和太后と爲らしめ、妃を義成王后と爲らしむ。
 子の昇英を立て王太子と爲し、拜して伊飡の繼康を上大等と爲す。

 二年、夏四月。
 霜降る。
 地震。
 三年、春三月。
 霜隕る。
 弓裔、水德萬歲を改め政開元年と爲す。

 四年、夏六月。
 槧浦水と東海水相ひ擊ち、浪の高さ二十丈許、三日にして止む。

 五年、秋八月。
 甄萱、大耶仇史二城を攻むるも克たず。

 冬十月。
 地震、聲は雷の如し。

 六年、春正月。
 太白、月を犯す。

 秋七月。
 王薨ず。
 諡を神德と曰ひ、竹城に葬らる。