【本文】 子禽子貢に問ひて曰く、夫子是の邦に至るに於けるや、必ずや其の政を聞く。 之れ求むるか。抑も之れ與にするか。 【註】 [鄭氏] 子禽は弟子の陳亢である。 【本文】 子貢曰く、夫子は溫、良、恭、儉、讓にして以て之れを得。 【註】 [鄭氏] 先生はこれら五德を行うことで政治に参画することになったのだ。 【疏】 子禽~求之。 [正義] この章は孔子が自らの有徳に由来して、国政に参与したことについて明らかにしたものだ。 「子禽子貢に問ひて曰く、夫子是の邦に至るに於けるや、必ずや其の政を聞く。之れ求むるか。抑も之れ與にするか」について。 「子貢曰く、夫子は溫、良、恭、儉、讓以て之れを得たり。夫子の之れを求むるや、其れ諸れ人の之れを求むると異ならん」について。 【注】 鄭曰~為治。 [正義] 子禽は弟子の陳亢である。子貢は弟子、姓は端木、名は賜である。 孔子家語の七十二弟子篇によれば、陳亢は陳人、字は子禽、孔子より四十歲ほど若かった。 史記弟子傳によれば、端木賜の字は子貢であり、孔子より三十一歲若かった。 「求めて之れを得るか」について。邪は未定の辭である。 |
≪白文≫ 子禽問於子貢曰、夫子至於是邦也、必聞其政。 求之與。抑與之與。 鄭曰、子禽、弟子陳亢也。 子貢、弟子、姓端木、名賜。 亢怪孔子所至之邦必與聞其國政、求而得之邪。抑人君自願與之為治。 子貢曰、夫子溫、良、恭、儉、讓以得之。 夫子之求之也、其諸異乎人之求之與。 鄭曰、言夫子行此五德而得之、與人求之異、明人君自與之。 疏。 子禽至求之。 正義曰、此章明夫子由其有德與聞國政之事。 子禽問於子貢曰、夫子至於是邦也、必聞其政、求之與。抑與之與者、子禽疑怪孔子所至之邦必與、聞其國之政事。 故問子貢曰、此是孔子求於時君而得之與。抑人君自願與夫子為治與。 抑、與皆語辭。 子貢曰、夫子溫、良、恭、儉、讓以得之。 夫子之求之也、其諸異乎人之求之與者、此子貢荅辭也。 敦柔潤澤謂之溫、行不犯物謂之良、和從不逆謂之恭、去奢從約謂之儉、先人後已謂之讓。 言夫子行此五德而得與聞國政。 他人則就君求之、夫子則脩德、人君自願與之為治。 故曰、夫子之求之也、其諸異乎人之求之與。 諸、與皆語辭。 注。 鄭曰至為治。 正義曰、云、子禽、弟子陳亢。子貢、弟子、姓端木、名賜者、家語·七十二弟子篇云、陳亢、陳人、字子禽、少孔子四十歲。 史記弟子傳云、端木賜字子貢、少孔子三十一歲。 云、求而得之邪者、邪、未定之辭。 ≪書き下し文≫ 子禽子貢に問ひて曰く、夫子是の邦に至るや、必ず其の政を聞く。 之れ求むるか。抑も之れ與にするか。 鄭曰く、子禽は弟子の陳亢なり。 子貢は弟子、姓は端木、名は賜。 亢は孔子の至る所の邦、必ずや其の國政を聞くを與にするに、求めて之れを得たか。抑(そもそ)も人君より願ひ之れ治を為すを與にするかを怪しむ。 子貢曰く、夫子は溫、良、恭、儉、讓にして以て之れを得たり。 夫子の之れを求むるや、其れ諸れ人の之れを求むると異なるか。 鄭曰く、夫子此の五德を行ひて之れを得、人の之れを求むると異なり、人君より之れを與にするは明らかなるを言ふ。 疏。 子禽至求之。 正義曰く、此の章夫子の其の有德に由り與に國政の事を聞くを明らかにす。 子禽子貢に問ひて曰く、夫子是の邦に至るに於けるや、必ずや其の政を聞くは、之れを求むるか。抑(そもそ)も之れを與にするかは、子禽孔子の至る所の邦は必ずや與に其の國の政事を聞くを疑怪す。 故に子貢に問ひて曰く、此れ是の孔子時の君に求めて之れを得るか。抑も人君より願ひ夫子と治を為すか。 抑、與は皆語辭なり。 子貢曰く、夫子は溫、良、恭、儉、讓以て之れを得。 夫子の之れを求むるや、其れ諸れ人の之れを求むると異ならんは、此れ子貢の荅辭なり。 敦柔潤澤之れを溫と謂ひ、物を犯さず行ふ之れを良と謂ひ、和從して逆はず之れを恭と謂ひ、奢を去りて約に從ふ之れを儉と謂ひ、人を先んじて後に已む之れを讓と謂ふ。 夫子此の五德を行ひて國政を聞くを與に得るを言ふ。 他人則ち君に就き之れを求む、夫子則ち德を脩め、人君より願ひ之れと治を為す。 故に曰く、夫子之の之れを求むるや、其れ諸れ人の之れを求むると異ならんか。 諸、與は皆語辭なり。 注。 鄭曰至為治。 正義曰く、子禽は弟子の陳亢を云ふ。子貢は弟子、姓は端木、名は賜は、家語七十二弟子篇云(いは)く、陳亢は陳人、字は子禽、少きこと孔子より四十歲。 史記弟子傳云く、端木賜の字は子貢、少きこと孔子より三十一歲。 云く、求めて之れを得るかは、邪、未定の辭なり。