子曰不患人之不己知也章

漢文

 子曰、不患人之不己知、患不知人也。


書き下し文

 子の のりたまは く、人の己の知るにあらざるを うれ へず、人を知らざるを うれ ふなり、と。

 子曰至來者

漢文

 疏子曰、不患人之不己知、患不知人也。
○正義曰、此章言人當責己而不責人。凡人之情、多輕易於知人、而患人不知己、故孔子抑之云、我則不耳。不患人之不己知、但患己不能知人也。


書き下し文

  おぎなひ 子の のりたまは く、人の己の知るにあらざるを うれ へず、人を知らざるを うれ ふなり、と。
○正しき ことはり に曰く、此の ふみ の人の當に己を責めて人を責めざるべしと言ふ。凡そ人の こころ は、人を知るを輕易 かるし とすること多く、而れども人の己を知らざるを うれ ふ。故に孔子は之れを抑へて いは く、我は則ち しか らず。人の己の知るにあらざるを うれ ふにあらず、但だ己の人を知るに能はざるを うれ ふのみなり、と。


現代語訳

○正義(正統な釈義)は次の通りである。

 この章は、人たるもの自己を責めるべきであり、他者を責めてはならないと言っているのだ。おおよそ人情とは、他者を理解することを軽視し、そのくせ他者が自己を理解しないことを心配するものだ。だから孔子はそれを抑えて言った。「私はそうではありません。人が自己の理解をしていないことを心配せず、ただ自己が他者を理解できないことだけが心配なのです。」

底本

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