子曰君子不器章

漢文

 子曰、君子不器。


書き下し文

 子の のりたまは く、君子は器ならず、と。

集解

漢文

 包曰、器者各周其用、至於君子、無所不施。


書き下し文

 包曰く、器なる者は おのもおの も其の はたらき あまね くするも、君子に至らば、施さざる所無し。

現代語訳

 包氏はいう。器とは、それぞれ自らの用途には周到であるが、君子ともなれば、為し遂げられないことがない。

 子曰、溫故而知新、可以為師矣

漢文

 疏、子曰、君子不器。 ○正義曰、此章明君子之德也。器者、物象之名。形器既成、各周其用。若舟檝以濟川、車輿以行陸、反之則不能。君子之德、則不如器物、各守一用。言見幾而作、無所不施也。


書き下し文

  おぎなひ 、子曰、君子不器。 ○正しき ことはり に曰く、此の ふみ は君子の德を明らむなり。器なる者、物象の名なり。形器 もの は既に成り、 おのもおの も其の はたらき あまね くす。若し舟檝 ふな の以ちて川を わた らば、車の輿 みこし は以ちて陸を行き、之れに そむ かば則ち能はず。君子の德は、則ち器物の おのもおの も一つの はたらき を守るが如くあらず。言ふらくは、 きざし を見て をこ り、施さざる所無きなり。


現代語訳

○正義(正統な釈義)は次の通りである。  この章は君子の徳を明らかにしている。器とは、物象の名である。形ある器は完成してから、それぞれがその用途に周到ではある。もし船舶では川を渡り、車輿では陸を行く。これに反することは不可能である。君子の徳は、器物がそれぞれのひとつの用途を守るのとは違っている。機を見ては行動を起こし、為し遂げられないことがないと言っているのだ。

底本

論語注疏- 中國哲學書電子化計劃