初転法輪

仏陀、最初の説法

現代語訳

 邪命外道アージーヴィカに帰依する優波迦ウパカという者がおり、世尊が迦耶ガヤーから菩提樹への道の途中で出会った。出会ってから世尊にお告げした。

「あなたの諸根身体は清浄であり、あなたの肌の血色も清浄にして穢れなきものです。あなたは誰に帰依して出家されたのですか? 誰をあなたの師とされたのですか? 誰の法に愛楽されたのですか?」

 彼からのかくのごとき言葉があった時、世尊は『偈』をもって優波迦ウパカに告げた。

~♪
一切の勝者は一切を知るのだ!
余は一切のダルマを汚染することなく、
渇愛は解脱して一切より離れた。
自ら証知したのだから誰を法とすることがあろうか?
余においては師が存在することなどあり得ぬ。
余に等しい者が存在することなどあり得ぬ。
どのような人もどのような天神も世間と等しく
余と比類するものはないのだ。
つまりは世間から供養を受けるに相応しい者である。
余は無上の師となったのだ!
余は独り正覚に等しく、
だから清涼にして寂静にあり。
そこで法輪を転移させるため、
迦尸カーシーの都城に赴いておるのだ。
盲闇の世間において
かの甘露アムリタの太鼓を……打つ!
~♪

 優波迦ウパカは言った。

「もしあなたが自称する通りなら、あなたは無辺の勝者となることができたのでしょう。」

 世尊は偈によって言った。

~♪
もし諸漏のあまねき滅盡を得れば、
すぐに余と同じ勝者となれるのだ!
あらゆる悪しき法に勝つのだ、優波迦ウパカよ!
これゆえに余は勝者となったのだ!
~♪

 かくのごとく説いた時、邪命外道アージーヴィカに帰依する優波迦ウパカは、

「そうかもしれませんネ……。」

と言ってかぶりを振り、別路を選んで離れ去った。


漢文

 有邪命外道優波迦、見世尊在迦耶與菩提樹途中。見已、白世尊、汝諸根清淨、汝膚色清淨皎潔、汝依誰出家耶。以誰為汝師。愛樂誰之法耶。


 彼如是言時、世尊以偈告優波迦曰、

一切勝者一切知
我不污染一切法
渴愛解脫離一切
自證知須法誰人
于我無有師
無有等我者
人天等世間
無與我比倫
此世間應供
我為無上師
我獨等正覺
而清涼寂靜
乃為轉法輪
赴迦尸都城
于盲闇世間
擊彼甘露鼓


 優波迦言、如汝自稱、汝適為無邊勝者。

 世尊以偈曰、

若得諸漏悉滅盡
即與我同為勝者
勝諸惡法優波迦
是故我乃為勝者

 如是說時、邪命外道優波迦言、或然、搖頭取別路離去。

書き下し文

 邪命外道の優波迦有り、世尊の迦耶と菩提樹の途中みちなかばに在るに見ゆ。見ゆこと已にして、世尊にまをす。汝の諸根は清淨きよらか、汝の膚色も清淨きよらかにして皎潔けがれなし、汝は誰に依りてか出家せむかや。誰を以ちて汝の師と為せり。誰の法を愛樂するかや、と。


 彼の是くの如きことばある時、世尊は偈を以ちて優波迦に告げて曰く、

一切あまねく勝つる者は一切あまねく知り
我は一切あまねき法を污染けがすことなし
渴愛は解脫して一切あまねくを離る
自ら證知すれば須らく誰人をか法とすべきか
我にけるや師有ること無し
我に等しき者有る無し
人も天も世間に等しく
我に與して比倫する無し
此れ世間の應供
我は無上の師と為れり
我は獨り正覺に等しき
而りて清涼にして寂靜す
乃ち法輪をはこばむとするが為
迦尸都城に赴かむ
盲闇の世間にいて
彼の甘露のつつみを擊たむ

 優波迦は言へり。如し汝の自らふがごとくあらば、汝は無邊の勝者と為るにかなへり、と。

 世尊は偈を以ちて曰く、

若し諸漏の悉くの滅盡を得れば
即ち我と同じく勝つ者と為れり
もろもろの惡しき法に勝つるべし優波迦よ
是れ故に我は乃ち勝つ者と為れり

 是くの如く說きたる時、邪命外道の優波迦は、或いは然らむ、と言ひて頭をり、ほかの路を取りて離れ去れり。