墨子 周頌

 

本文

漢文

聖人之德
若天之高 若地之普
其有昭於天下也

若地之固 若山之承
不坼不崩

若日之光 若月之明
與天地同常

書き下し文

聖人の德、
天の高きの ごとし。
地の普きが ごとし。
其れ有らば天下に ひかりあり。

地の固きが ごとく、
山の つもるが若く、
くるもなく崩るるもなく、
日の光の ことく、
月の明かりの ごとく、
天地 あめつちと同じきこと常なれり。

現代語訳

聖人の徳は、
天のように高く、
地のように広がり、
それは天下を照らし出す。

地のように堅固で、
山のように積み上げられ、
裂けることも崩れることもなく、
日の光のように、
月の明かりのように、
常に天地と共にある。

付記

 墨子に引用された詩。周頌からの引用であるとも明示されているが、現伝の詩経に収録されていないので散逸した詩だと推測される。

 長篇の詩文が記され、内容も明快でかつ含蓄がある。逸詩なのが不思議な感じ。

 素直に読めば正統な支配者たる聖人王の徳は世界のすべてを照らし出すほど大いなるものだという意味だろうけど、この部分を断章取義すれば、天下のあらゆる人々が聖人の徳を有しており、だからいつもどこにでも存在し、決して壊れることがないと説く詩とも解釈できよう。

底本

墨子- 中國哲學書電子化計劃